ユルブリナーか周潤發か。あ、それは『王様と私』か。王子じゃなかった・・・。
と、くだらないことは置いておいて、『アルプスの少女ハイジ』である。
最近NHK BSで、『アルプスの少女ハイジ』が放映されている。私はまさに、カルピス劇場で育ったような世代。それもわりと初期のハイジ、マルコ、パトラッシュ、ラスカルあたりがドンぴしゃだ。ハイジもよく見た。山羊から直接お乳を飲むこと、藁のベッドに寝ること、白パンと黒パンを食べることが憧れだった。
朝、会社に行く仕度をしながらテレビをつけっぱなしにしている(なぜこんな時間に?まあまあ。勤務形態が若干人とずれているのです)と、懐かしさも手伝ってついつい見入ってしまう。お話はまだ、ハイジがオンジの家に来てから間もないあたり。ハイジはようやく乳搾りや指笛が吹けるようになったばかりだ。
先日は、ハイジがオンジからチーズの作り方をならうシーンがあった。なんでも自分でやりたい好奇心旺盛なハイジは、おじいさんにねだってチーズ作りをやらせてもらう。と言っても、火にかけた山羊のお乳をしゃもじでゆっくりかき回し続けるだけなんだけど。ところが、ペーターと一緒に山に入った子ヤギのユキちゃんが勝手に帰ってきてしまい、それに気をとられたハイジはチーズ作りをすっかり忘れて山に行ってしまう。無事にユキちゃんを山に返し、ご機嫌で家に戻ってきたハイジの目の前に、何かを黙々とこするオンジの姿が。山羊の乳がこびりついて、鍋が煤けてしまったのだ。
ナレーションは言う。
「おじいさんは、一言もハイジを責めませんでした。」
私には、たぶん無理だ。こういう時、子供を責めてはいけないことは分かっているのだ。でも、プンプンモードに入ってしまうと、なかなかそうもいかない。さすがに叱りつけることはないとは思うが、
「目を離すと焦げちゃうからねー。次から気をつけようねー。」
くらいは言うだろう。
しかし、オンジはそれすら言わない。彼は静かにこう言うのだ。
「ハイジに任せたおじいさんが悪かった。ハイジには小さくてまだ無理だったな。」
文字にするとちょっとイヤミに聞こえるかもしれないが、オンジはとても穏やかに、あたたかくこの言葉を口にする。そしてそれ以降は、黙々とすすをこそげ落とす作業を続けるのだ。
ハイジはこの後、家を飛び出し、風にゆれて音をたてるもみの木と“会話”をかわすうちに、自分の気持ちをちゃんと整理して(オトナじゃん!)、また家に戻る。
「お鍋きれいにするの、手伝うね。」
「そうか。」
こうしてハイジはひとつ成長するのだった・・・。
今回『アルプスの少女ハイジ』を見ていて、オンジに感情移入して見ている自分を発見して驚いた。オンジが麓の町でパンを買った帰りに、ショーウィンドーに大きなキャンディを見つけて立ち止まるシーンなんて、共感して胸がほこほこしてしまった。私も子供向けのものを見ると、ついつい「ヤーメイとリョッケに買ってあげたら喜ぶかな~」と顔がほころんでしまう。そんな私とオンジが重なったのだ。キャンディを大事そうになめるハイジを見つめるオンジのやさしい視線は、姪と甥を見つめる叔母(私)の視線と重なる。30年余りの時を経て、私の視点はハイジからオンジへ、コドモからオトナへと変わったのだ。まあ、自分がオトナになってるから当たり前なんだけど、何しろハイジ視点の記憶が長かったもので。
さて、そのオトナの視点で見てみると、ハイジはかなり扱いに困る子供だ。いたずらとか悪ガキとかいうことではなく、なんでも自分でやりたがり、負けん気も強く、強情で頑固。好奇心が強くて、なんでも自分で試してみないと気がすまない。もちろん逆に言えば、活発でいつも目をきらきらさせている、生命力にあふれた子供でもあるのだ。ただ、オトナ視点で見ると、ハイジみたいな子供はちょっと骨が折れる。
こういう子供に、「じゃあやってごらん」と言ってやらせてみること、そして口出しをせず見守ることは、思いのほか難しい。なんでこんなにキッパリ言うかというと、ウチの姪っ子ヤーメイも、こんな子供だからだ。子供に何かやらせる時には、必ずリスクを覚悟しなければならない。だって、うまくいかないし。じれったいし。その割にうまくできないとすねて泣いたりするし。正直言って、自分でやっちゃったほうがうんと早いし、ラクチンなのだ。そんな私と比べて、オンジは懐が広い。いつもやさしくハイジを見守り、導いている。ものすごい根気だ。
とは言え、そんなオンジも、自分で作った木製食器とパンを交換してもらいに村のパン屋に行って、値上げを知らされずにいてだまされたと思いこみ、カーッと瞬間湯沸かし器のように怒ってパン屋とケンカ。「もういい!パンなら下の町に行けばもっといいものが買える!」と言い放って店を出て行ってしまう。ああ、おじいさんったら。誤解なんだよなあ、もう。でも、いるいる!こんな頑固でへそ曲がりなオヤジ!一本気で、思いこんだら直情的になっちゃって、自分で引っ込みがつかなくなっちゃうのよね。オンジ、かわいい。
さて、この後ハイジは山を下り、ロッテンマイヤーさんの厳しいしつけのもとで精神のバランスを崩し、寝ぼけて夜にあたりを徘徊したりもする。ハイジという子供をどう育てたらいいのか、どうしたら好奇心の固まりと善意の泉のような子供をまっすぐ育ててやれるのか・・・これって児童教育のケーススタディじゃないか。
驚いた。『アルプスの少女ハイジ』は、実は教育論だったのだ。
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